アパートの空室対策は、原因を確かめてから打つと無駄な出費を減らせます。募集の流れを露出・反響・内見・申込の4段階に分け、どこで止まっているかを見るのが近道です。

本記事では、段階ごとの原因の見分け方と、費用の小さい順に進める対策の全体像を整理します。値下げや大きな改修を決める前の判断材料としてお使いください。

アパートの空室が埋まらない主な原因

アパートの空室が埋まらない主な原因は、家賃や初期費用のずれ、物件情報の届き方、内見時の印象、間取りや入居条件のずれ、募集を担う会社との連携不足の5つに分けられます。どれか1つではなく、複数が重なって長引いているケースも少なくありません。

総務省の調査では、2023年10月1日時点の賃貸用の空き家は全国で443万6千戸で、空き家全体900万2千戸の49.3%を占めます。住宅全体に占める空き家の割合(空き家率)は東京都が10.9%で、全国の13.8%より低い水準です。

空き家率が全国より低い東京都でも、入居希望者は近隣の似た物件と比べて選びます。比較で見劣りする点があれば、空室は埋まりにくくなります。

家賃や初期費用が周辺相場と合っていない

同じエリア・築年数・広さの物件より家賃や初期費用が高いと、比較の段階で選ばれにくくなります。部屋探しをする人は、敷金・礼金や仲介手数料を含めた入居時の負担も家賃と並べて見ています。

ポータルサイトでは家賃の上限を指定して検索できるため、上限をわずかに超えると、その条件で探した人の検索結果には表示されません。たとえば「7万円以下」で探す人には、家賃7万1千円の部屋は候補に入りません。

物件情報が部屋探しをする人に届いていない

募集情報がポータルサイトに載っていない、または写真や説明が少ない状態では、条件が合う人にも見つけてもらえません。掲載の有無だけでなく、写真の枚数や明るさ、間取り図、設備の記載まで確認が必要です。

掲載されていても、募集を始めた頃の写真や説明のままだと、新しく出た物件に埋もれやすくなります。設備を入れ替えたときや季節が変わったときは、写真と説明文も合わせて更新します。

内見で候補から外れる状態になっている

共用部の汚れや室内のにおい、古さが目立つ設備があると、内見しても申込に進みにくくなります。外観やエントランス、廊下は部屋に入る前に目に入りやすく、第一印象を左右しやすい場所です。

間取りや設備、入居条件がニーズと合っていない

想定する入居者像と間取り・設備・入居条件がずれていると、問い合わせがあっても決まりにくくなります。単身者の多いエリアで部屋数の多い間取りを募集している場合や、周辺の似た物件より入居の条件が厳しい場合が典型です。

募集を担う会社との連携が機能していない

管理会社や仲介会社から募集状況の報告や改善の提案がないと、原因の発見と対策が遅れます。オーナーが状況を把握できないまま、同じ条件で募集が続いている状態は見直しのサインです。

たとえば、数か月たっても問い合わせの件数や見送りの理由が共有されない場合は、4段階のどこで止まっているかも判断できません。報告で確認したい項目は、この記事の後半で整理しています。

空室の原因は募集の4段階で切り分ける

空室の原因は、露出・反響・内見・申込の4段階のどこで止まっているかを順に確認すると絞り込めます。止まっている段階が分かれば、打つべき対策も自然に決まります。

段階確認すること疑われる原因
露出ポータルサイトに掲載され、閲覧されているか掲載先の不足、検索条件からの漏れ
反響閲覧に対して問い合わせが来ているか家賃・初期費用、写真や説明の見劣り
内見問い合わせが内見の予約につながっているか内見調整の手間、問い合わせ後の対応
申込内見した人が申し込んでいるか、審査で止まっていないか室内・共用部の状態、設備のずれ、審査の基準

各段階の件数は、募集を任せている管理会社や仲介会社に確認すると把握できます。数字がそろわない場合は、少なくとも問い合わせと内見の有無だけでも聞いておくと切り分けが進みます。

物件情報が見られていない場合

閲覧自体が少ないなら、掲載先と掲載内容を確認し、検索条件から漏れていないかを見直します。家賃が検索でよく使われる金額の区切りをわずかに超えていないか、駅からの距離や設備の登録に漏れがないかも確認します。

見られているのに問い合わせが少ない場合

閲覧はあるのに問い合わせが少ないなら、写真・間取り図・家賃と初期費用の見せ方が、比較で負けている可能性があります。近隣で募集中の似た物件を同じ条件で並べ、家賃・初期費用・写真の印象・設備の違いを書き出すと差が見えます。

たとえば、写真が暗い、室内の写真が数枚しかない、間取り図に収納の位置や広さが書かれていないといった状態は、比べられたときに不利になりやすい点です。写真の撮り直しや説明文の追記は、大きな費用をかけずに始められます。

問い合わせはあるのに内見につながらない場合

問い合わせが内見に進まないなら、内見の調整のしやすさや問い合わせ後の説明に原因がある可能性があります。鍵の受け渡しに手間がかかり、すぐに内見できない物件は、仲介会社に紹介を後回しにされやすくなります。

問い合わせへの返信が遅い、内見できる日時が限られている、現地での待ち合わせに時間がかかるといった点も、予約が入りにくくなる要因です。管理会社には、問い合わせから返信までにかかる時間と、日程が合わずに内見できなかった件数を聞いてみてください。

内見はあるのに申込が入らない場合

内見が入っても申込がないなら、室内や共用部の状態、内見で分かる設備や周辺環境が決め手を欠いている可能性があります。内見に立ち会った仲介会社に見送りの理由を聞くと、物件側の弱点を具体的に把握できます。

申込があっても入居審査で止まっている場合は、審査の基準や進め方に原因があります。基準があいまいでオーナーの判断待ちが長引くと、その間にほかの物件で契約されてしまうこともあります。

原因に合わせた空室対策と優先順位

空室対策は、費用のかからない募集条件・募集資料・清掃の見直しから始め、次に少ない費用でできる改善、大きな改修は最後という順番が基本です。大きな改修は、物件そのものが原因だと確かめてから検討します。

止まっている段階先に打つ対策費用の目安
露出掲載先の追加、検索条件や設備登録の見直し小さい
反響写真の撮り直し、募集資料の改善、家賃・初期費用の見直し(家賃を下げると毎月の収入も減る)小さい
内見内見の予約や鍵の受け渡しを簡単にする小さい
申込審査の進め方の見直し、清掃、設備の追加、部分的な改修小さい〜大きい

募集方法の見直しや改修の進め方は、それぞれ検討すべき論点が多いため、原因を特定してから個別に詰めると判断がぶれません。

費用をかけずにできる見直し

家賃や初期費用の設定、入居条件、募集写真や説明文、共用部の清掃は、大きな出費なしで見直せます。家賃を下げる前に、礼金を減らす、入居日から一定期間の家賃を無料にするといった初期費用側の調整も比べてみてください。

比較的少ない費用でできる改善

インターネット設備や宅配ボックスの導入、照明や水回り部品の交換など、比較で目に付く部分の改善が候補になります。費用は物件の規模や工事内容で変わるため、複数社の見積もりを取り、家賃収入で何か月あれば回収できるかを確認してから決めます。

募集時にかかる広告料などの費用は「賃貸管理でかかる費用まとめ」で整理しています。

大きな費用がかかる改修は最後に検討する

間取りの変更や大がかりな改修は、回収にかかる期間を見積もり、ほかの対策で改善しない場合に検討します。露出や反響の段階で止まっているなら、改修より先に募集条件や見せ方を直すほうが費用を抑えられます。

逆効果になりやすい空室対策

相場を確かめずに家賃を大きく下げる、入居条件を一度に緩めすぎる、原因を確かめないまま大きな改修をするの3つは、収益や入居後の安定を損なうおそれがあります。どれも「早く埋めたい」という焦りから選ばれやすい対策です。

相場を確かめずに家賃を大きく下げる

家賃の値下げは毎月の収入が入居期間中ずっと減るため、相場との差を確かめ、初期費用で調整できないかを先に検討します。同じ建物の既存入居者より大幅に安くすると、更新時に値下げを求められるきっかけになることもあります。

入居条件を一度に緩めすぎる

入居条件を広げるときは、審査の基準を先に決め、家賃保証会社の利用などで審査のやり方をそろえてから進めます。基準があいまいなまま条件だけを外すと、申込ごとに判断がぶれ、入居後に家賃の支払いが滞ったときの備えも手薄になります。

基準は、収入に対する家賃の割合や保証会社の審査結果など、どの申込者にも同じように当てはめられるものにします。条件を変えたら募集資料の記載もそろえて仲介会社に伝えておくと、問い合わせの段階での行き違いを防げます。

原因を確かめないまま大きな改修をする

露出や家賃の問題が残ったまま改修しても、費用に見合う効果が出ないことがあります。改修の前に4段階のどこで止まっているかを確認し、申込の段階で物件の状態が理由になっていると分かってから判断します。

退去を減らして空室を出しにくくする

空室を出しにくくするには、入居中の不具合や相談に早く対応し、共用部を清潔に保つことが基本です。新しい入居者を探すより、今の入居者に長く住んでもらうほうが、募集にかかる費用と空室期間を抑えられます。

入居中の対応の早さを保つ

設備の故障や騒音などの相談に早く対応すると、不満による退去を防ぎやすくなります。相談の内容と対応日を記録しておけば、同じ不具合の繰り返しや対応の遅れにも気付けます。

共用部の清掃や電球の交換など、入居者が毎日目にする部分の手入れも、住み心地の印象を左右します。

退去理由を聞き取って次の募集に活かす

退去時に理由を聞き取っておくと、物件の弱点が分かり、次の募集や改善に使えます。転勤や結婚など物件と関係のない理由か、設備や騒音への不満かを分けて記録すると、打つべき対策が明確になります。

聞き取りは退去の手続きや立ち会いの際に行い、答えやすいよう選択肢を用意しておくと集めやすくなります。

空室が長引くときに管理会社と確認したいこと

空室が長引くときは、募集の掲載状況、問い合わせと内見の件数、見送りの理由、次の改善提案の4点を管理会社に報告してもらいます。報告を受けても改善が見られない状態が続く場合は、管理会社の見直しも選択肢になります。

募集状況の報告で確認したい項目

掲載先、問い合わせの件数、内見の件数、見送りの理由の4つが分かれば、どの段階で止まっているかを判断できます。

報告の頻度や内容が契約で決まっているかも確認しておくと、後から状況を追いやすくなります。対応が遅い、報告がないといった状態が続く場合は「避けたい賃貸管理会社の特徴」も参考にしてください。

改善提案がないときは見直しを検討する

報告や改善提案が乏しい状態が続く場合は、ほかの管理会社の意見も聞いて比べる方法があります。相談先を選ぶ考え方は「アパート経営の相談先に迷ったときの選び方」で整理しています。

いまの管理会社の対応状況を整理したい場合は「管理会社診断」を使えます。管理を任せたときに含まれる業務は「賃貸管理」のページで紹介しています。

よくある質問

空室が埋まらないときは家賃を下げるべきですか

まず周辺の似た物件と家賃・初期費用を比べ、差がある場合に見直します。差が小さいなら、礼金の減額や一定期間の家賃無料など初期費用側の調整を先に比べると、毎月の収入を保ちやすくなります。

一定期間の家賃を無料にする方法は効果がありますか

入居時の負担を下げられるため、反響の段階で止まっている物件では比較で目に留まりやすくなります。短期間での解約に備えて、無料期間を設ける場合の解約条件を契約書で定めておくと安心です。

どのくらい空室が続いたら対策を見直すべきですか

一律の基準はありませんが、同じエリアの似た物件が決まっているのに自分の物件だけ残っている場合は見直しの時期です。4段階のどこで止まっているかを確認し、止まっている段階に合う対策へ切り替えます。

引っ越しの多い時期を待てば空室は埋まりますか

引っ越しの多い時期は部屋探しをする人が増えますが、比較で見劣りする原因が残ったままだとその時期にも選ばれにくくなります。時期を待つ間に、写真や募集条件など費用のかからない見直しを済ませておきましょう。